学校見学会 結果報告

 この度、東京都練馬区立開進第二中学校難聴学級の先生方のご厚意により、学校見学をさせていただくことができました。

 東京都練馬区では、公費で小中学校の授業や行事に通訳者の派遣や遠隔支援システムを導入しています。開進第二中学校(以下開二中)は2010年から遠隔支援システムを導入し、難聴学級での取り出し授業と共に、難聴生徒に対して学校全体で手厚くサポートしている公立中学校として、全国的に注目をされています。開二中の取り組みは2013年NHK Eテレ「ろうを生きる難聴を生きる」でも取り上げられ、大きな反響を呼びました。

 今回、成人会員2名の他に三島市の小学校4年生の難聴児童生徒とその保護者も参加し、三島市より4名で見学をさせていただきました。

難聴学級での取り出し授業を見学

 開二中には難聴学級があり、校内通級生(※1)が6名在籍している他、校外通級生(※2)も何名か在籍しています。

 校内通級生は、国語・英語・数学の3教科を防音設備の整った難聴学級で、先生と1対1(2対1もある)で勉強をし(取り出し授業)、その他の教科は通常学級で学んでいます。教室の時間割と進度は通常学級と同じです。

 静かな環境だと、先生の英語の発音もしっかり聴き取れて、非常に恵まれているという印象を受けたのと同時に、わからないことをその場で質問できるので、個別指導塾が公立中学校の中にあるようなものだと思いました。

 

(※1)校内通級とは、開二中に在学し、校内にある難聴学級に通う方法。

(※2)校外通級とは、他の中学校に在籍し、開二中の難聴学級に通う方法。

通常学級での遠隔支援風景を見学

 校内通級生は、国語・英語・数学以外の教科は、在籍する通常学級で学んでいます。全ての教科でロジャーを使用しています。先生が一方的に話すことの多い社会には、ロジャーの他に、スマートフォンを使った遠隔による文字情報支援を受けながら授業に参加しています。

 先生の声はロジャーによって聞こえてきますが、そこの文字情報が加わることで、自分が聞き逃している(あるいは聞こえなかった)事に気づくことができるメリットと、情報に取り残されないことは、自分が学習活動に参加している満足感や、自信にもつながります。特に思春期の子どもにはこの支援が大きな助けになるだろうと感じました。

難聴生徒の案内による校内見学

 難聴学級では、教科の補充の他に、自立支援活動というものがあります。これは、生徒が意欲的に学校生活ができることを目指して行う活動で、個別とグループでの活動が週2日放課後にあるそうです。

 今回の校内見学も生徒が自ら発案し、分かり易く看板を作ったり、順路や説明を考えたそうです。ドアの鍵を開ける担当、説明をする担当、看板を掲げる担当など、それぞれが役割を担って、校内の案内をしてくれました。

 途中、職員室や校長室にも立ち寄り、先生方が出てきて挨拶をしてくださいました。どの先生もロジャーマイクの扱いに慣れていて、教職員の間でしっかり研修が行われていることを感じさせました。

 校内に難聴学級があることで、他の生徒も難聴に理解があり、学校全体でその人のハンディを支え合うという空気を感じました。

難聴児生徒への質疑応答

 「好きな先生はいますか?」という質問に対して、複数の生徒から同じ先生の名前が上がりました。その理由を聞くと「声が大きいから」「はっきり分かり易く話してくれるから」ということでした。ロジャーを利用していても、遠隔支援を受けていても、やはり先生自身が「聞こえにくい生徒がクラスにいることを意識して配慮」して下さることが、生徒にとって「一番の支援」になるのだと感じました。そうした意識の高い先生の授業は、難聴生徒にも、他の生徒にも人気があり、生徒たちもその教科(理科の先生でした)が好きになるようです。

見学を終えて

 今回、英語の授業は、難聴学級での取り出し授業と、通常学級(難聴児生徒がいない)の授業の両方を見学することができました。難聴学級では先生と生徒の1対1の授業なので、静かな学習環境の中、その子のペースで進められる授業はとてもいいなと思いました。対して通常学級の英語の授業はスピード感があり、先生のテンポの良いリードに、当然ながら耳の聞こえる生徒たちもしっかりついていき、活発な会話のやりとりは、先程までの難聴学級の空気感とはまった違ったものでした。

 現在完了「have+過去分詞」の例題として、先生が「○○に以前会ったことがある」の○○を芸能人に例えて、生徒たちの興味を上手に引き、「芸能人に会ったことのある人?」という質問に対して、生徒たちから「嵐に会ったよ」「メープル超合金に会ったよ」と活発に発言が交わされ、「それ芸能人じゃないよ~」「お笑い芸人ばっかじゃん」(爆笑)というクラス全員の笑いの一体感が、英語の授業をとても楽しい雰囲気にしていました。

 そこで、ふと、難聴学級の取り出し授業で学んでいる難聴生徒のことを考えました、

 彼女は自分いない間にクラスで盛り上がった話題を知らないのです。休み時間に自分のクラスに帰ってきた時、友だちが授業の話題で引き続き盛り上がっていたらどんな気持ちになるのかな・・・?と。淋しい?気にしない?仕方ない?そういうもんだって割り切れば平気なのかな?「え?なになに?何の話?」と積極的に聞きにいければ、それはそれでいいのかもしれないけれど、もしそうじゃなかったら、など色々考えてしまいました。じゃあ、あのテンポに全ての難聴生徒がついていけるか、というと決してそうではないのです。クラス全体の発言を、クラスメイトの発言を一言一句漏らさず聞き取ることは不可能です。

 結局、何を重点を置くか、ということだと思います。授業で完璧に学ぶことなのか、授業に参加することなのか。

 聴力は個々に違い、必要なニーズも支援も違って当然だと思います。選択肢を広げるという意味では、開二中のように難聴学級があることで、生徒は自分に必要なものを選ぶことができます。「選ばない」という選択もあるかもしません。

 三島市の子どもたちが「選択できる」環境を整備することが、その努力をすることが、つまりは親の仕事なのだろうな、と思いました。